水葬のあと遺体はどうなる?世界と日本の水葬事情を解説

水葬

遺体を川や海に流す水葬という弔い方は、今も世界の一部地域でおこなわれています。

日本でも、かつては水葬が用いられていたこともありますが、現在では法律によって禁じられています。

この記事では、水葬で弔われた遺体がどうなるのかや、世界的な水葬事情を解説します。

水葬とは

水葬とは、亡くなった方の遺体を海や川などに流して弔う葬法です。

日本では昔、海の先に「常世の国」と呼ばれる死者の国があり、亡くなった方をその国に送るために水葬が用いられていました。

そんな水葬には「舟葬」と「海葬」という2種類の葬法が存在します。

どちらも、常世の国があるという海上他界観に則った方法です。

水葬について詳しく知るために、まずは2種類の葬法について詳しく見ていきましょう。

船に乗せて流す「舟葬」

舟葬とは、小さな舟に遺体を乗せて海に流す方法です。

舟葬は地域や宗教観でやり方がいろいろあります。

例を挙げると、舟に遺体を乗せて流す方法や、舟をモチーフにしたものを遺体と一緒に流す方法などなど。

地域によっては、死期が近付いている人を、亡くなる前に海に流す場合もあったといわれています。

海に流す「海葬」

海葬とは、遺体をそのまま流す葬法です。

ちなみに、海だけでなく川に流す場合もこの名前で呼ばれます。

また近年では、細かい粉にしたお骨を海に流す散骨も「海葬」の一種として取り扱われることがあります。

水葬のあと遺体はどうなる?

歴史的に行われていた水葬の場合

まず水葬をおこなうには、遺体が水中に沈む処置をおこなう必要があります。

なぜなら、人体の内部には、肺など空気が入っている部位があり、一度沈んでも浮き上がってしまうためです。

また、腐敗する過程でガスが発生し、それも浮かび上がる原因となります。

処置をおこなって海底に沈んだ遺体は、徐々に腐敗していきます。

エビやカニなどの生物が集まり、腐敗した肉を食べ始めることで、肉体は徐々に骨だけになっていくのです。

気温や水中の環境によって差がありますが、およそ1ヶ月〜3ヶ月程度で白骨化する場合が多いのだとか。

人の骨が完全に分解されるには、約50年〜100年かかるといわれています。

水葬によって海に返った遺体のお骨は、その後長い時間をかけて海に還っていくのです。

散骨の場合

遺体を粉にして海に流す「海洋散骨」の場合、水流に流されたり海底の土で分解されたりしやすいと考えられています。

どのくらいで完全に無くなるかは定かではありませんが、そのまま沈めるよりも海に還るスピードは早いでしょう。

世界の水葬について

世界を見ると、現在でも水葬を用いる地域は存在します。

また、エコの観点から生まれた新しい水葬も注目を集めています。

ここでは、世界における水葬の事情を解説します。

インドの水葬|ガンジス川に流し清める

水葬をおこなう地域で最も有名なのは、インドでしょう。

インドのガンジス川は、ヒンズー教の信者にとって「沐浴すると罪が洗い流される」といわれるほど、神聖で特別な場所です。

そのため、インドでは遺体を川に流すとその人の罪が洗い流され、苦しみの輪廻から開放されて悟りに達するといわれているのだとか。

インドのヒンズー教徒にとって、死後ガンジス川に流されることは、もっとも望ましい葬法なのです。

なお現在のインドでは、一度火葬した骨をガンジス川に流す方法が一般的となっています。

新らしい形の水葬|アルカリ加水分解葬

SDGsが推進されている今、新たな水葬の形として注目を集めている葬法が「アクアメーション・レゾメーション(アルカリ加水分解葬)」です。

この葬法では、遺体を特殊なアルカリ溶液に漬けて、人体を分解することで、骨だけを残します。

アクアメーション・レゾメーションは、火葬や土葬に比べると環境汚染につながる原因を大幅に減少でき、さらに費用も抑えられる葬法です。

地球にも遺族にも優しいアルカリ加水分解葬は、まさに革新的な次世代の水葬といえるでしょう。

水葬は日本でも可能?

現代の日本において、水葬は刑法190条「死体遺棄罪」に該当するため、実施できません。

ただし、例外として水葬が認められる状況や方法が3つあります。

ここでは、日本で水葬が認められるケースについて詳しく見ていきましょう。

船舶の航行中は例外的に可能

1つ目の例外は、船舶の航行中に故人が亡くなった場合です。

ただし、船舶内で亡くなった方を水葬するためには、とても厳しい条件があります。

まず、日本船籍の船で人が亡くなった場合、船員法第15条及び船員法施行規則第4条・第5条に基づいた条件下で水葬が許可されます。

条件は複数あり、例を挙げると「死亡後24時間経過している」「衛生上、遺体を船内で管理できない」「遺体が浮き上がらない処置をおこなうこと」などがあります。

さらに、自衛隊の船の場合は防衛省訓令「隊員の分限、服務などに関する訓令・第21条」の条件も付け加えられます。

その他にも複数定められた条件を満たして初めて、日本での水葬が認められます。

海洋散骨

海洋散骨とは、故人の焼骨を粉にして、海に流す葬法です。

日本では法律で、焼骨の埋葬を墓地以外の場所でおこなってはならないとされていますが、散骨を禁止する規定はありません。

そのため、故人が海に流してほしいと希望していれば、海洋散骨による弔いが可能です。

海洋散骨をおこなう場合、陸地から一定距離離れた海域でおこなわなければなりません。

そのため、船をチャーターして散骨地点に行く方法や、代行散骨を依頼する方法などさまざまな方法が用いられています。

深海葬

深海葬とは、特別な骨壺に粉状にした焼骨を納め、深海に安置する葬法です。

2023年に始まったこの葬法は、駿河湾の海底2000メートル程の位置に骨壺が沈められます。

骨壺に使われている素材は、沖縄県産の泥岩で、長い時間をかけてゆっくりと分解され海に還っていく素材です。

深海葬では、埋葬した場所が記された証明書が発行されるほか、GoogleEarth上でオリジナルのデジタル墓標が表示されます。

遺族は、スマホやパソコンからアクセスすることで、いつでもお墓参りができるのです。

海洋散骨とは異なり、お骨の位置が一定なので「墓標にお参りをしたい」「故人が眠る場所を知っておきたい」というニーズに合った葬法です。

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