イギリス国王チャールズ3世の母であるエリザベス女王は、2022年9月8日に亡くなられました。
エリザベス女王は1926年4月21日、祖父・国王ジョージ5世の治世下で誕生。
ヨーク公アルバート王子(後の国王ジョージ6世)とエリザベス妃の第一子として、宮廷で育ちました。
1936年、父親のジョージ6世がイギリス国王に即位。
1952年に国王ジョージ6世が崩御したため、王女のエリザベス2世(Queen Elizabeth II)が25歳でイギリスの君主に即位しました。
エリザベス女王は2022年に96歳で亡くなりましたが、国王としての在位期間はなんと70年と214日。
イギリス史上、さらに世界の女性君主史上として、最高齢であり、最長在位の君主でした。
国民だけでなく、世界の人々からの人気も高かったエリザベス女王。
偉大なるイギリス女王の葬儀は、一体どのようなものだったのでしょうか?
さぞかし豪華で壮大なお式だったのでは…と想像しますよね。
こちらの記事で掘り下げていきたいと思います。
エリザベス女王の葬儀費用は約280億円
2022年9月19日、ウェストミンスター寺院でエリザベス女王の国葬が執り行われました。
女王の国葬にかかった費用は、総額およそ1億6200万ポンド(約278億円)。
イギリスの財務省は「国葬と関連行事がそれにふさわしい威厳を保ちつつ円滑に執り行われること」、さらに「人々の安全と安心が終始、保証されること」が政府にとっての最優先事項であると説明しました。
つまり、最優先事項を遂行するためには巨額を投じる必要があったというわけです。
葬儀から埋葬までに支出された金額も明らかにされています。
- 内務省:7368万ポンド(約126億円)
- デジタル・文化・メディア・スポーツ省:5742万ポンド(約98億6000万円)
- スコットランド政府:1875万6000ポンド(約32億2000万円)
以上のように、各省庁が支出を計上しました。
最も高額だった内務省は、警察組織を所管しています。
国賓級の出席者が世界中から集まるため、その警護やテロ対策で費用が膨らんだとみられます。
エリザベス女王の葬儀が執り行われた場所は?
エリザベス女王の国葬が執り行われた場所は、世界文化遺産に登録されているロンドンのウェストミンスター寺院です。
こちらの寺院は、イングランド国教会に属しており、非常に格調の高い寺院として知られています。
イギリス王室の冠婚葬祭といえば、ウェストミンスター寺院を想起する人も多いのではないでしょうか。
国葬の場として選ばれた理由は、エリザベス女王の人生の大きな節目を見守ってきたからでしょう。
たとえば、エリザベス女王が、1947年にフィリップ王配(エディンバラ公)との結婚式を挙げた場所もウェストミンスター寺院です。
また、1953年に行われた女王の戴冠式も、世界各国の元首級の賓客らを招待してウェストミンスター寺院で執り行われました。
これらの歴史的背景を考えると、ここ以外に国葬にふさわしい場所はないかもしれません。
なお、女王の父であるジョージ6世の国葬の場に選ばれたのは、ウィンザー城の礼拝堂でした。
エリザベス女王の葬儀の様子
エリザベス女王の国葬では、史上最大規模となる約1万人が警備に動員されました。
この動員数は、ロンドンオリンピックの1日の警備人数を上回っています。
女王の葬儀には、アメリカのバイデン大統領をはじめとする各国の元首など、2,000人以上が参列しました。
日本からは天皇皇后両陛下も出席されました。
実は、天皇の立場で外国の王室の葬儀に出席するのは異例のことです。
しかし、イギリス王室と日本の皇室3代にわたる交流を踏まえ、女王の国葬に出席されることとなりました。
なお、ウェストミンスターホールでの一般弔問には25万人が並んだと言われています。
多くのイギリス国民が女王とお別れをするために並び、一時は待ち時間が24時間以上になったことも。
サッカーの元イングランド代表、デヴィッド・ベッカムも列に並んでいるところを目撃されています。
エリザベス女王の葬儀の席順
エリザベス英女王の国葬において、その席次がどのような順番になるかを世界中が注目していました。
まず最前列にはチャールズ国王夫妻ら親族が着席し、その後ろにイギリス連邦でチャールズ国王を国家元首とする英国以外の14ヵ国の要人の席が続きました。
世界各国のリーダーの席は、さらにその後ろです。
日本の天皇皇后両陛下は6列目で、隣はマレーシアのアブドゥラ国王でした。
前方の6列目という席次に、女王と3代の天皇との深い絆が示されていると感じた人もいたのではないでしょうか。
また、アメリカのバイデン大統領の席が、ポーランド大統領やカナダ首相よりも後方の14列目だったことも広く報じられました。
これは、バイデン大統領夫妻が要人のバスには便乗せず、別行動で到着したため、入場しやすい後方の席になったのでは、と推測されています。
エリザベス女王の埋葬地は?
国葬後、エリザベス女王のご遺体は、ウィンザー城内の聖ジョージ礼拝堂に埋葬されました。
2011年から2022年まで、ウィンザー城はエリザベス女王の主な居住地であり、世界各国の国賓も城を訪れています。
元帳石と言われる墓石の上部には、父のジョージ6世、母のエリザベス王太后、夫のエディンバラ公フィリップと並び、エリザベス2世の名が刻まれました。
英国メディアの報道によると、墓碑はベルギー産の黒大理石を使用し、真ちゅう製の文字がはめ込まれているそうです。
2002年に亡くなった女王の妹・マーガレット王女の遺灰や、2021年にご逝去した夫・フィリップ王配のご遺体も、聖ジョージ礼拝堂に埋葬されました。
エリザベス女王は、愛する家族と共にここで眠りについているのです。
エリザベス女王の最期のご様子
エリザベス女王は、2022年9月8日、静養先のスコットランド・バルモラル城で崩御されました。
周囲を森や荘園に囲まれたバルモラル城は、1852年、アルバート王配が妻のヴィクトリア女王のために購入した城です。
イギリス王室の夏の休暇地としても有名です。
2022年夏、女王のバルモラル城滞在中に保守党党首の交代がありました。
9月6日、当時の英国首相ボリス・ジョンソンがバルモラル城を訪れ、女王に辞表を提出し、リズ・トラスの首相任命式が行われました。
首相任命式は、本来であればロンドンのバッキンガム宮殿で行われるものです。
しかし、高齢で体調がすぐれない女王がロンドンに移動することはできませんでした。
バルモラルで首相任命式が行われたのは1885年以来のことです。
9月8日午前、女王の健康状態が悪化したことを知ったチャールズ王太子がヘリコプターでバルモラル城に到着。
王太子の妹・アン王女と合流し、女王をお見舞いしました。
同日昼に、医師団は女王が医療監視下に置かれていることを国民に発表しています。
午後3時10分、エリザベス女王はバルモラル城で崩御。
96歳でした。
9月29日に公表された死亡診断書によれば、女王の死因は老衰です。
イギリス君主がスコットランドで崩御するのは、1542年のジェームズ5世以来でした。
1946年の夏、まだ王女であったエリザベス女王は、フィリップ王子からこのバルモラル城でプロポーズされました。
女王が亡くなる1年前、フィリップ王配は老衰で崩御しています。
女王はフィリップ王配を追うように、二人の大切な思い出であるバルモラル城で永遠の眠りにつかれたのです。