皇室の葬儀は、日本の伝統文化や歴史が反映された特別な儀式です。
その形式や流れは一般的な葬儀とは異なり、皇室独自の規範に基づいて執り行わおこなわれます。
本記事では、「大喪の礼」や「斂葬の儀」をはじめとした皇室の葬儀の特徴や流れ、さらに葬儀における服装やアクセサリーのマナーについて解説。
皇室独自の葬儀について、詳しく学んでいきましょう。
皇族の葬儀とはどんなもの?
皇室の葬儀は、日本の歴史と伝統に根差した特別な儀式で、皇族の格式を象徴しています。
「大喪の礼」はその中でも国民とともに追悼する場として位置づけられ、一方で「大喪儀」や「斂葬の儀」など、皇室独自の儀礼が併せて行われるのも特徴です。
ここでは、それぞれの違いや特徴を見ていきましょう。
皇族の葬儀は「大喪の礼」と呼ぶ
皇族の国葬は「大喪の礼」と呼ばれ、日本国憲法のもとで国家の儀式として位置づけられています。
この儀式は、政教分離の原則を遵守するため、特定の宗教色を排した無宗教型の形式でおこなわれるのが特徴です。
「大喪の礼」は、天皇や上皇が崩御した際に実施される非常に重要な儀式であり、国民がともに追悼する場でもあります。
伝統と現代の調和を意識し、厳粛に執りおこなわれているのです。
「大喪儀」とは何が違う?
「大喪儀」は皇族の葬儀において皇室の私的な儀式を指し、皇室祭祀に基づいた神道の伝統的な形式で執りおこなわれます。
一方、「大喪の礼」は国家儀式として無宗教型で行われ、政教分離の原則を遵守する点で異なっているのです。
「大喪の礼」は国民全体が故人を悼む公的な儀式であるのに対し、「大喪儀」は皇室内部で故人の魂を鎮めることを目的としています。
この二つの儀式は形式や目的が明確に異なり、分離した形でおこなわれるものです。
埋葬は「斂葬の儀」と呼ぶ
「斂葬の儀」とは、皇族を埋葬する儀式です。
「斂」は「おさめる」という意味を持ち、この儀式では霊柩を墓所に納めることで皇族の最期を見送ります。
この儀式は、古来の皇室の伝統に基づいており、墓所に安置するまでの過程を通して、故人の魂を鎮める意味も含まれるものです。
皇族の葬儀の流れ|大喪の礼
皇族の葬儀では、国の儀式として「大喪の礼」が執り行われます。
櫬殿祗候(しんでんしこう)
ご逝去された皇族の遺体を仮安置する儀式です。
櫬殿と呼ばれる部屋に遺体が運ばれ、関係者が見守ります。
御船入り(おふないり)の儀
遺体を内棺に納める儀式で、一般の納棺にあたるものです。
皇族では内棺と外棺の二重構造が採用されます。
拝訣(はいけつ)
皇族が遺体と最期の別れを告げる儀式です。
正寝移柩(せいしんいきゅう)の儀
霊柩を「正寝(せいしん)」と呼ばれる場所に移動させる儀式です。
殯宮祗候(ひんきゅうしこう)
霊柩が「殯宮(ひんきゅう)」に安置される、一般の通夜にあたる儀式です。
ここで皇族や関係者が礼拝をおこないます。
皇族の葬儀の流れ|斂葬の儀
斂葬の儀は、埋葬に関する儀式を指します。
葬場(そうじょう)の儀
告別式にあたる儀式で、霊柩が葬場殿に運ばれ供物が捧げられます。
火葬
現代では火葬が主流です。
皇族の場合、火葬後の遺骨は特別に設けられた霊櫃(れいびつ)に納められます。
墓所(ぼしょ)の儀
遺骨が陵に埋葬され仮塚が設けられた後、正式な墓が造営されます。
皇室の葬儀で着られる服装やネックレスは?
皇室の葬儀では、格式高い儀式にふさわしいように参列者の服装やアクセサリーに厳格なマナーが求められます。
ここでは、皇室の葬儀に関する服装やアクセサリーのポイントを見ていきましょう。
【男性の服装】
男性は派手な色や柄物は避け、シンプルなモーニングコートを着用するのが基本です。
黒いベストを合わせ、全体の印象を落ち着かせることで、葬儀の厳粛さを損なわないようにします。
【女性の服装】
女性は黒のアフタヌーンドレスが適切で、場合によっては喪帽をかぶり、上品で控えめな装いを心がけます。
肌の露出を抑えるデザインを選び、シンプルながらも厳粛さを感じさせる装いとなっています。
【アクセサリー】
アクセサリーは控えめなものが基本で、「涙の象徴」とされ、喪に服する心を表すパールが最も適しています。
色は白、グレー、黒が適切で、二連や長すぎるネックレスは避けられます。
また、女性皇族はジェット(化石化した漆黒の宝石)を身につけることもあります。
【バッグと靴】
バッグは光沢のない布製のものが適しており、革製でもマットな質感のものを選びます。
靴は黒で光沢のないパンプスが推奨され、装飾が目立つものは避けられます。
【その他の注意点】
派手な装飾品や目立つデザインは控え、シンプルかつ上品な装いを心がけます。
また、髪型も過度に華美なスタイルは避け、自然で清潔感のあるまとめ方が適切とされています。