ファマディハナとは、マダガスカル共和国の死生観に基づく宗教儀式です。
マダガスカルでは、人が亡くなると火葬せず布に包んで墓に安置します。
その遺体を掘り起こして行うファマディハナは、歌や踊りで賑やかに執り行われる儀式です。
この記事では、ファマディハナやマダガスカルの死生観を紹介していきます。
ファマディハナとは?マダガスカルのお祭り?
ファマディハナは、アフリカの南東に浮かぶマダガスカル島に残る風習で、埋葬された遺体を掘り起こして行う儀式です。
親戚や知人など多くの人が集まり、歌ったり踊ったりしながら遺体を担いで練り歩くため
「死者とのダンスパーティー」と表現されることもあります。
独特な雰囲気を持つファマディハナとは、どんな儀式なのでしょうか。
伝統的な改葬儀式「Famadihan(ファマディハナ)」
マダガスカルの伝統的な儀式Famadihan(ファマディハナ)は、墓地から布で巻かれてミイラ状になった遺体を掘り起こし、布を交換する儀式です。
3日間にわたり、墓の周りに集まった人々がご馳走を食べたり、掘り起こした遺体を担いで練り歩いたりした後、新しい布を巻いて再び墓地に埋葬します。
人々は死者との再会を喜ぶように、賑やかな音楽でファマディハナを盛大に盛り上げます。
遺体を担いで踊り回る様子は、まるでお祭りのようです。
ファマディハナの時期は地方によって異なり、数年ごとに行ったり、白骨化する数十年後に行ったりする他、毎年同じ時期に行うところもあります。
先祖を包む高価な布「ランバメーナ」
ファマディハナで交換する遺体を包む布は、ランバメーナと呼ばれ、山繭の糸を紡いで織り上げた貴重な布です。
ランバメーナは大変高価で、マダガスカルの平均的な給料の数か月分にも該当するといわれています。
マダガスカルの人々は、先祖は自分たちを守ってくれる大切な存在だと考えるため、何年もかけてお金を貯めて、ランバメーナやファマディハナの費用を準備します。
命をつむぐゴザ
ファマディハナが済んだ後、遺体を置いていたゴザの争奪戦が始まります。
遺体を置いたゴザの一部を寝床に置くと、子宝に恵まれるという言い伝えがあるため、子どもが欲しい女性たちが、競ってゴザを取り合うのです。
先祖とつながる儀式であるファマディハナは、同時に次の世代へと命をつむぐ行事にもなっているのです。
マダガスカルの死生観
ファマディハナが行われるマダガスカルでは、土着信仰として独特な死生観があり、死者や死後の世界が身近なものと感じる傾向があります。
次は、マダガスカルの人々が考える、死に対する考え方を紹介します。
マダガスカルに残る言い伝え
マダガスカルには「生きている間は家で、死後は墓で共に暮らす」という言い伝えがあり、
死んだ人も生きている間と同じように、一緒に暮らすものだと考えられています。
高価なランバメーナを交換するため遺体を掘り起こし、盛大なファマディハナが行われるのは、故人に対する変わらない敬愛がもたらすものでしょう。
そのように大切に葬られた祖先は、生きている家族の幸せのために祝福を与える、ありがたい存在になります。
死ぬこと=祖先になること
マダガスカルでは、死ぬことを「祖先になる」と表現します。
マダガスカルの人にとって、死ぬことは命が尽きることではなく、生きている人の祖先となるという、生の延長線上にあるできごとだと考えられているのです。
遺体を掘り起こして行われるファマディハナは、死者の魂を迎えてもてなす、日本でいう盆踊りのような意味を持つ行事なのかもしれません。
ファマディハナでペスト流行?存続の危機?
近年マダガスカルではペストが流行し、多くの死者が出たことから、ファマディハナで遺体を置いていたマットが原因ではと、医療関係者から警鐘が鳴らされました。
現在は、ペストで亡くなって接触した人が感染する恐れがある遺体は、ファマディハナを行えない無名の集団墓地に埋葬するよう、定められています。
マダガスカルの伝統的な儀式ファマディハナですが、今後は存続が難しくなるかもしれません。