世界の埋葬方法は、その国の宗教や死生観、時代を反映し、国や地域によってさまざまです。
日本では、火葬した遺骨を墓に納骨する伝統的な埋葬方法の他、近年は樹木葬や散骨など新しい埋葬のスタイルが広がってきました。
世界でも同様に、埋葬方法は変化を遂げていますよ。
この記事では、世界の埋葬方法をエリア別に紹介しています。
世界の埋葬方法で主流なのは?
世界の埋葬方法の中で、主流となっているのは土葬(埋葬)と火葬です。
キリスト教圏の国では土葬が一般的ですが、それはキリスト教で人は死んだ後に復活し、天国へ行くという教えがあるからです。
火葬して肉体が亡くなると復活できないという考え方から、土葬による埋葬が浸透しました。
一方、日本では99パーセント以上が火葬ですが、最近は納骨せず散骨を希望する人も増えています。
近年は欧米でも火葬するケースが増えてきましたが、日本のような遺骨ではなく、粉状に粉骨した遺灰にします。
世界の埋葬方法|アメリカ・ヨーロッパ諸国
さまざまな宗教があるアメリカやヨーロッパ諸国では、国や宗派によって主流となる埋葬方法が異なります。
また、時代の流れや考え方の変化により、伝統的な埋葬方法とは異なる埋葬を望む人も増えてきました。
次は、アメリカやヨーロッパ諸国の埋葬方法を紹介します。
アメリカ
アメリカはキリスト教徒が多い国ですが、近年は火葬による埋葬の割合が、それまで一般的だった土葬を上回るようになってきました。
土葬よりも費用も手間もかからないため、多くの人が火葬を選ぶようになってきたのです。
また、コロナ禍で多くの人が亡くなり、埋葬が間に合わなくて、遺体を自宅で保管する必要が発生したこともあり、ますます火葬が執り行われるようになりました。
遺灰を自然豊かな山や海に散骨したり、遺灰を原料とした陶器を作ったりと、さまざまな工夫をこらしたサービスが提供されています。
イギリス
イギリスは移民が多い国なので、かつてはいろいろな国の埋葬方法が行われてきました。
しかし、近年は墓地の価格が高騰したことから火葬が増え、2018年現在で火葬が80パーセント以上を占めるようになっています。
遺骨は墓地に納骨しないで散骨を希望する人が多く、景観の良い海や川、山などで、散骨されています。
また、ガーデニングが盛んな国なので、墓石を置かないで樹木などの植物を使った樹木葬も人気です。
イタリア
カトリックの国イタリアでは宗教上、土葬が一般的でしたが、近年は火葬も増えてきました。
土葬の場合は、棺に入れた遺体を市の許可を得た共同の墓所、または個人の墓所に入れるか、木材の棺を直接土に埋めます。
埋葬には期限が決められており、期限を過ぎると葬儀社が遺骨を拾って納骨堂で管理します。
空いた墓所は新たな埋葬に使われるので、スペースを節約できる埋葬方法と言えるでしょう。
火葬の場合は、遺骨を共同の墓所か個人の墓に納骨したり、海や山、決められた墓地に撒いたりします。
フランス
フランスの埋葬には、日本とは異なるルールがあります。
1つ目は、埋葬は必ず死後48時間以内にするという厳格な決まりです。
かつて伝染病による死者を土葬して、感染が広がった歴史からできた決まりで、現在も48時間以内に埋葬できないと、警官が特別に棺を封印します。
2つ目は、公営墓地は5年間という期限があることです。
5年後に期限を更新しなかったり、遺族と連絡がとれなかったりすると、遺骨は墓地から撤去され合葬されます。
火葬の場合、遺灰は故人の好きな場所に撒かれるのが一般的です。
ドイツ
ドイツでもカトリックの教えから、20世紀までは火葬が禁止されていて、土葬が主流でした。
しかし、近年では費用を節約できる上に管理も簡単な、火葬にも人気が集まっています。
火葬した遺灰は墓地に埋葬する他、海に散骨したり樹木葬にしたりしますが、自宅で保管することは禁止されています。
ドイツの墓地は、広大な敷地が公園のように整備されてベンチなどもあり、散歩のルートとして気軽に立ち入れるところが多いです。
スウェーデン
個人主義のスウェーデンでは、お墓を作らず遺骨をミンネスルンド(追憶の杜)と呼ばれる、共同墓地に撒いたり納骨したりする合同葬が人気です。
匿名性が高く遺族に埋葬先を知らせない埋葬方法で、遠方にいても身近なミンネスルンドでお墓参りができます。
首都ストックホルムには、スコーグスシュルコゴーデン(森の墓地)と呼ばれる共同墓地があり、森に囲まれた広大な敷地内に10万基以上のお墓や火葬場、礼拝堂などがあります。
「死後は森に帰る」というスウェーデン人の死生観に合った墓地で、世界遺産に登録されました。
世界の埋葬方法|アジア圏
アジア圏はヒンズー教、仏教など宗教の違いや儒教の影響などで、国によってさまざまな埋葬方法があります。
また、インドやチベットのように火葬や土葬以外の埋葬方法を行う国もあります。
続いては、アジア圏の埋葬方法を紹介しましょう。
インド
ヒンズー教徒が多数派のインドでは、ヒンズー教の教えに従った埋葬方法が主流です。
ヒンズー教では聖なる川であるガンジス川に入ると、罪や穢れが清められると信じられていて、全てのインド人が行う訳ではありませんが、遺骨をガンジス川に流します。
一部の地域では火葬することなく、遺体をそのままガンジス川に流す習慣もあるそうです。
有名なタージマハールはイスラム教徒による昔のお墓ですが、インドのヒンズー教徒はお墓を持たないのが一般的です。
中国
中国では、遺体の毀損行為に当たる火葬を禁じる儒教の教えから、土葬による埋葬が一般的でした。
しかし、近年は中国政府が火葬を推進するようになり、火葬を選ぶ人が増えてきました。
上海では、火葬して海に散骨すると補助金が支払われ、一部の地域では土葬は禁止されています。
現在中国で最も信者が多いのは、神話や先祖崇拝などを混合した神教で、無宗教の人も多いため、火葬に対する抵抗感は減少しています。
チベット
チベット仏教の国チベットでは、故人の位の高さに応じて以下のような埋葬方法があります。
【塔葬】
最も名誉のある埋葬法
ダライ・ラマなどの特別に位の高い僧の埋葬方法で、遺体をミイラにして霊塔に埋葬します。
【天葬(鳥葬】
遺体を鳥に食べさせる埋葬法
チベットで一般的な埋葬方法で、死後は肉体を返すべきという考えに基づいたものです。
【火葬】
身分の高い人や高僧が亡くなると行う埋葬法
塔葬の次に身分が高い高位高官の埋葬方法で、バターや油で火葬します。
【土葬】
土葬では成仏できない考えから、重罪を犯した人が亡くなった際の埋葬法
チベット仏教では土葬すると成仏できないと信じられているため、天葬できない罪人を土葬します。
【水葬】
天葬ができない地域で行う埋葬法
ハゲワシが飛来しない地域の埋葬方法で、遺体を魚に捧げるという考え方も反映しています。
韓国
韓国は国民の半数がクリスチャンの国で、遺体の毀損行為に当たる儒教が信じられているため、かつては火葬が禁止されていて、土葬が一般的でした。
しかし、近年は土地不足により土葬するための土地を確保できないことから、火葬が増加して現在は火葬による埋葬が一般的です。
土地が不要なロッカー式の墓も増え、遺族や故人の好みに対応した、いろいろなデザインのロッカー式納骨堂が提供されています。
世界の埋葬方法|その他
世界には、その他にもいろいろな埋葬方法があります。
最後は、南米のメキシコと西アフリカのガーナの埋葬方法を紹介します。
メキシコ
メキシコは古代アステカ時代の死生観が強く残っていて、死は生の延長だと考えられています。
そのため葬儀の服装は自由で、葬儀場にはカフェテリアが設置されたり、マリアッチの演奏が行われたりして、暗さがありません。
日本のお盆に当たる「死者の日」は、骸骨のオブジェを飾ったりメイクをしたりして、陽気に楽しむ賑やかなお祭りです。
埋葬方法は基本的に土葬です。
グアナフアトにはかつて市営墓地のスペースを空けるために掘り出された、ミイラ化した遺体を陳列した、ミイラ博物館があります。
ガーナ
ガーナはキリスト教徒が多い国ですが、アフリカ独自の死生観があり、人は死んだ後に新たな人生が始まると信じられています。
新たな人生に向けて旅立つ故人を祝うため、盛大な葬儀の支度をします。
そのため、埋葬は亡くなってから数ヶ月後に行われることが珍しくありません。
それまで遺体は専用の冷蔵庫で保管されます。
葬儀ではYoutubeなどで評判になった、棺桶を担いで踊る「棺桶ダンス」に、参列者も陽気にダンスに参加して盛り上がります。
これは伝統的なものではなく、最近急に流行し始めたそうです。