一昔前までは、お墓に埋葬されるのが当たり前でしたが、最近は葬送方法もバラエティに富んでいる時代となりました。
その中でも「バルーン葬」は、とてもユニークな葬送方法です。
そこで今回は、「バルーン葬とはどんな葬送方法なのか」「バルーン葬とは宇宙葬の1つなのか」という疑問にお答えします。
「迷惑はかからないのか」「費用はいくらなのか」についても解説していきますので、この機会にぜひ知識を深めてくださいね。
バルーン葬とは?違法ではない?
まずは、「バルーン葬とはどんなものなのか」「違法ではないのか」について、お話しします。
バルーン葬は一種の散骨方法
バルーン葬とは、亡くなった方の遺骨を粉状にして、直径2m〜2.5m程度のバルーン(風船)におさめ、成層圏まで飛ばす葬送方法です。
気圧の変化を利用した方法で、成層圏に至ったバルーンは元の何倍もの大きさに膨らんだのち、破裂します。
そうすると中におさめてあった粉状の遺骨が、自然に散骨されるという仕掛け。
つまりバルーン葬は、一種の散骨ということになり、自然葬に当たるわけです。
そもそも自然葬とは、「自然に還る」ことを目的に、より自由な葬送スタイルを追求していくもの。
多くの人が、その理念にロマンを感じるのもわかる気がしますよね。
バルーン葬は、数ある自然葬の中でも、より自由度の高い葬送スタイルといえるのではないでしょうか。
このシステムを利用すれば、故人の遺灰が地球を周遊しますので、宇宙から子孫を見守り続けているようなイメージを持てますよね。
大空を見上げたとき、懐かしい故人が見守ってくれていると思うと、なんだか力が湧いてくるような気がしませんか?
違法ではない
日本では、市町村が定めた墓地以外での埋葬を禁じていますが、バルーン葬は違法には当たりません。
「墓地に埋葬しないのだから、バルーン葬も違法なんじゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが、「散骨」だけはその限りではないのです。
法務省や厚生労働省は、「節度を持って行うのであれば、葬送を目的とした海や山などへの散骨は、遺棄罪に当たらない」という旨の見解を示しているため、そこは問題ないでしょう。
バルーン葬は迷惑?ゴミにならない?
「バルーン葬は迷惑になるのでは?」と心配になる方もいると思いますので、ここからはその疑問についてお答えしていきます。
場所を選べば迷惑じゃない
違法ではないバルーン葬ですが、どこでも実施していいというものではありません。
他人の所有地でバルーンを打ち上げるのはもってのほかですが、自分の所有地であっても周辺の住民の方への配慮は忘れないようにしましょう。
また、散骨そのものが禁止されている地域もありますので、注意が必要です。
せっかくの素晴らしい試みも、マナーを守らずに行ってしまえば、トラブルの元になりかねません。
どうせなら節度を守って、気持ちよく故人を見送りたいものですね。
バルーンは自然に還るためゴミにならない
エコの側面があることも、バルーン葬が人気の理由でしょう。
バルーンの素材は、天然ゴムです。
実際に破裂したあと、細い繊維のような状態になり、地上へと落下します。
そこから、およそ2週間かけて、自然に還るのだそう。
ですからゴミになる心配はまったくありません。
考えてみると、こんなにエコな葬送方法はあまりないかもしれませんね。
バルーン葬の費用は宇宙葬の中では安い?
成層圏で散骨することから、バルーン葬は宇宙葬の一種ともいえます。
宇宙葬には、さまざまな種類がありますが、かなり高額です。
- カプセルに遺灰をつめて打ち上げる「流れ星供養」は30万円〜100万円
- ロケットに遺灰を積んで散骨する「宇宙散骨」は120万円〜200万円
一方バルーン葬は、20万円程度なので、宇宙葬の中でもリーズナブルといえるでしょう。
「宇宙葬への憧れがある、だけど予算には限りがある」とお悩みであれば、バルーン葬を検討してみるのもおすすめです。
バルーン葬のメリットは?
バルーン葬のメリットは、たくさんありますが、今回は3つのポイントにしぼってお話しします。
故人の遺志を尊重できる
バルーン葬を選ぶ方は、「自然に還りたい」「大空に憧れがある」「自由でいたい」といった思いを生前に抱いている場合が多いのだとか。
そう考えると、バルーン葬の最大のメリットは、「故人の遺志を尊重できる」点にあると思います。
自然に憧れている方が、亡くなったあと、自由気ままに地球を周遊できるのだとしたら、こんな素晴らしいことはありませんよね。
「きっと喜んでくれているだろう」と思えるのは、残された遺族にとっても、最大の慰めになるのではないでしょうか。
お墓周りの管理がいらなくなる
「墓守」や「墓じまい」といった言葉を聞いたことがある人も多いと思います。
墓守とは、文字通りお墓を守る人。
つまり先祖代々続くお墓の管理を担う人のことです。
実は、最近の墓事情として、墓守の後継者がいないという問題があるのだとか。
そうなると誰も管理する人がいなくなるので、お墓は荒れ果ててしまいますよね。
結果として、放置されたお墓が増えるという問題も起こっているようです。
そうなる前に、お墓を片付けてしまう「墓じまい」という方法もありますが、意外とお金がかかるのが現状です。
こういった問題をすべて解決できるのが、バルーン葬のメリット。
そもそもお墓に納骨する必要がないのですから、お墓の管理などという悩ましい問題は生まれないというわけです。
お墓周りの管理に頭を悩ましている方は、いっそのことバルーン葬などの自然葬に切り替えるのも一つの手段かもしれませんね。
宗教・宗派に捉われない
通常の葬送方法は、必ずといっていいほど、宗教・宗派に捉われていますよね。
普段は自分の実家が、どんな宗教のどんな宗派に属しているか考えることもない人が多いのではないでしょうか。
ところが、いったんどなたかが亡くなると、そういったことに翻弄されてしまいがち。
その点、バルーン葬であれば、宗教・宗派の垣根を越えて、自由に故人を悼むことができます。
これはバルーン葬の隠れたメリットといえるかもしれませんね。
もしも宗教・宗派にこだわりたくないと思う方がいるのであれば、バルーン葬は一つの選択肢だといえるでしょう。
バルーン葬のデメリットは?
メリットがあれば、デメリットもあるのが、世の常です。
ここからは、バルーン葬のデメリットについてお伝えしていきましょう。
相見積もりが取りづらい
バルーン葬を取り扱っている葬儀業者が少ないため、相見積もりが取りづらい点は、デメリットといえるでしょう。
とくにご家族が亡くなって悲嘆に暮れているときに、さまざまな業者を探すのは至難の業です。
もしもご家族の中に、バルーン葬をしたいと希望される方がいる場合は、生前にしっかりと話し合っておくといいでしょう。
時間的・精神的な余裕があれば、より多くの業者に当たって相見積もりを取ることも可能になるでしょうし、ご本人の希望に沿った業者を選ぶこともできます。
遺族の同意がいる
亡くなった方をお見送りする一連の儀式は、遺族のためのものでもあります。
ですから、いくら故人の遺志であったとしても、遺族のみなさんの意向をいっさい考えないのは問題があります。
バルーン葬は、まだまだ一般的とはいえないところがありますよね。
なので、どうしても受け入れられないという遺族がいても不思議ではありません。
また一部を分骨してほしいというケースもあると思いますので、バルーン葬を実施する前には、必ず遺族の同意を得る必要があります。
遺族の同意を取らなければならない点は、場合によってはデメリットになることもあるでしょう。
いざというときのトラブルを避けたいのであれば、事前によく話し合っておくことが必要です。