この話が噓か真か…。どう思うかはあなた次第です…。
これはうだるような暑さの夏の物語。
ある日の放課後、関西のとある高校の教室にて、A、B、Cの三人は談笑していた。
何気ない日常の一コマ。
しかし、その日、友人Cが突拍子もない提案をした。
「なあ、今日の夜、あの廃寺行こうや。」
Cの言葉に、AとBは一瞬驚きつつも、興味津々で顔を見合わせた。
廃寺というのは、地元でも有名な心霊スポットだ。
廃墟のようになったその寺は、いつ頃廃れたのかも分からず、誰も近寄らなくなって久しい。
「ええやん、行く行く!ちょっと怖いけど、行ってみようや。」
AとBはすぐに乗り気になり、予定通りその日の夜にCの家に集合し、三人で廃寺へ向かうことに決めた。
夜、月明かりの下、廃寺に着いた三人は中に入ってみた。
しかし、廃寺の中には異常なほどの静けさが広がっていた。
ひび割れた壁、壊れた仏像、そしてほこりにまみれた床、雰囲気があるだけで他は何もない。
まるで何十年も人の手が入っていないような状態だ。
「なんか思ったより普通や…」Bが肩をすくめて言う。
「ちょっと期待外れやな。」Aも同意する。
それでも三人はしばらく寺内を見て回ったが、特に変わったことも起こらなかった。
少し肩を落としながらも、帰る準備をしようと寺の入口へ向かったその時だった。
入口近くの石碑の前に、見知らぬ女性が立っていた。
彼女は手で顔を押さえ、背中を向けていたが、何か不気味な雰囲気を放っていた。
月明かりに照らされたその姿は、まるで影のように淡く、だがどこか怖さを感じさせる。
「こんな時間に人?」Aが小声でつぶやく。
「いや、こんなところに?」Bも呆気に取られる。
三人は一瞬、恐怖を感じたが、女性の後ろをすり抜けるように駆け抜けてその場を離れた。
心臓が早鐘のように鳴っていたが、恐怖に駆られている自分たちを必死に押さえ込んだ。
廃寺を出た後、AとBは恐怖が少し冷めてきたのか、軽い調子で話し始めた。
「あの女の人、何やったん!?バカ怖かったよな!」Aが声をかける。
「ほんまそれな。こんな時間にえぐいわ…ありえへんやろ。」Bも笑いながら答える。
だが、Cは何かが違った。
彼は真っ青な顔をして、二人を見つめていた。
「おい、C、大丈夫か?」Aが心配そうに聞くと、Cはしばらく黙っていた後、震えるような声で言った。
「……あの女の人、こっちを見て、『ごめんなさい』って言ってきたんだ。」
その言葉に、AとBは言葉を失った。
何かを気にしながらも、誰もそれ以上は口にせず、無言で歩き続けた。
Cの家の前で、三人は解散し、各々の家へと向かった。
その夜、Aのスマホが鳴った。
グループチャットの通知で、Cからのメッセージだった。
【~グループチャット~】 C「ほんまだるい さっき廃寺でワイヤレスイヤホン落としてもうた」 A「まじ?」 B「おまえやってんな」 C「ガチでごめんなんやけど、明日でええから2人イヤホン取りに行ってくれへん?今日のん体験したら俺行くん無理やわ、さすがに」 A「まぁそうよな ええで、俺らで行ったるわ」 B「うぃ、俺らに任せぃ」 |
AとBは承諾した。
ちょうど明日は土曜日で学校は休み、それにCが体験したことを思うと2人に断る理由はなかった。
翌日、AとBは再び廃寺に向かった。
前夜の出来事が頭から離れなかったが、Cのイヤホンを探すため、勇気を振り絞って寺の中に入った。
だが、あの石碑の前に立つ女性は見当たらなかった。
「良かった…、いないみたいだな。」Bがほっと息をつく。
二人は石碑に近づき、その碑に何が刻まれているのか確認した。
近づいてみると、そこには「水子供養」のために建てられたと書かれていた。
「水子供養…?」
Aはその言葉を口に出し、少し冷や汗をかく。
「これさぁ、『ごめんなさい』って言ってたんって、もしかして…」
その瞬間、二人の胸に何とも言えない気持ちが込み上げてきた。
恐怖よりも、哀しみや憐みの気持ちを感じていた。
何があったのかは分からないが、あの女性が石碑の前に立っていたのは、我が子が流れてしまったからだろう。
そのことに対して謝っていたのかもしれない。
もしあの人が霊だとして、何故Cにだけ語りかけたのかは分からないが、早く彼女には自分自身を許してあげてほしい。
二人は無言のままCのイヤホンを探し続けた。
その間、セミだけが空へ向かって何かを伝えんとするように鳴くだけだった。
【怪談vol.1】
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