本記事で紹介しているエピソードは、一般の方から寄せられたものです。
Y課長は、オフィスで知らない人がいないほどの「マジック好き」。
飲み会や懇親会では必ず披露するし、その腕前は確かにプロ顔負け。
でも、私にはどこかその笑顔が不気味に思えることがあった。
ある日、私のポカミスが続いたのを理由に、課長に呼び出された。
「君、最近だらしないねぇ。」
その場の空気はピリピリしていたが、課長は急に笑顔を浮かべてこう言った。
「まぁいいや、ちょっとリフレッシュしよう。僕の新しいマジック、見ていかない?」
差し出されたのは見慣れないボロボロのトランプ。
「古くてゴメンね」と言いながらも、どこか「仕掛け」があるような気配を感じた。
「適当に1枚引いてごらん。」
促されるままカードを引くと、そこには 私の名前と社員番号 が書かれていた。
驚いていると、課長がにっこりと微笑む。
「びっくりするだろう?君のロッカーの中にあった不要なメモ帳、ちょっともらっておいたんだよ。」
背筋がゾッとした。
課長が私の私物を勝手に漁ったということなのか?
でもそれで終わりじゃなかった。
「次はもっと驚くよ。ほら、このUSB、心当たりない?」
目の前に差し出されたのは、確かに私がなくしたと思っていたUSBだった。
あの日、何度探しても見つからなかった、あのUSB。
課長はそれを手の中で転がしながら続ける。
「この中身、見たけど君、結構面白いメール書いてるね。」
プライベートなメールの下書きが見られたことを悟り、全身が震えた。
必死に声を上げようとするが、部長は指を一本立てて制した。
「何も言わなくていいよ。これ、次のトリックに使えると思って、ちょっと持ってただけだから。」
そして、机の上に並べられる奇妙なアイテムたち――なくしたはずのイヤホン、社内カフェのレシート、そして自分の名刺。
「全部、君のものだよね?」とにこやかに尋ねる課長。
「これが僕のトリックの秘密さ。『人の見落としたものを拾っていく』ってわけ。」
その笑顔には、マジックの喜びも達成感もなく、ただ純粋な「遊び」のような無邪気さがあった。
だけど、それが何より恐ろしい。
最後に課長はこう言った。
「これからは気をつけてね。大事なものをなくさないように。君が失敗するたび、僕のネタが増えるんだから。」
その後、課長が去った部屋には、私がずっと探していた家の鍵が机の上に静かに置かれていた。
この怖い話から得た人生の教訓
- 人を操るもっとも怖い能力は、「無害そうに見える笑顔」の裏側にある
- 誰が何を知っているか、本当に分からないのが怖いのだ