人怖エピソードVol.1:笑顔の裏のブラックボックス

本記事で紹介しているエピソードは、一般の方から寄せられたものです。

Y課長は、オフィスで知らない人がいないほどの「マジック好き」。

飲み会や懇親会では必ず披露するし、その腕前は確かにプロ顔負け。

でも、私にはどこかその笑顔が不気味に思えることがあった。

ある日、私のポカミスが続いたのを理由に、課長に呼び出された。

「君、最近だらしないねぇ。」

その場の空気はピリピリしていたが、課長は急に笑顔を浮かべてこう言った。

「まぁいいや、ちょっとリフレッシュしよう。僕の新しいマジック、見ていかない?」

差し出されたのは見慣れないボロボロのトランプ。

「古くてゴメンね」と言いながらも、どこか「仕掛け」があるような気配を感じた。

「適当に1枚引いてごらん。」

促されるままカードを引くと、そこには 私の名前と社員番号 が書かれていた。

驚いていると、課長がにっこりと微笑む。

「びっくりするだろう?君のロッカーの中にあった不要なメモ帳、ちょっともらっておいたんだよ。」

背筋がゾッとした。

課長が私の私物を勝手に漁ったということなのか?

でもそれで終わりじゃなかった。

「次はもっと驚くよ。ほら、このUSB、心当たりない?」

目の前に差し出されたのは、確かに私がなくしたと思っていたUSBだった。

あの日、何度探しても見つからなかった、あのUSB。

課長はそれを手の中で転がしながら続ける。

「この中身、見たけど君、結構面白いメール書いてるね。」

プライベートなメールの下書きが見られたことを悟り、全身が震えた。

必死に声を上げようとするが、部長は指を一本立てて制した。

「何も言わなくていいよ。これ、次のトリックに使えると思って、ちょっと持ってただけだから。」

そして、机の上に並べられる奇妙なアイテムたち――なくしたはずのイヤホン、社内カフェのレシート、そして自分の名刺。

「全部、君のものだよね?」とにこやかに尋ねる課長。

「これが僕のトリックの秘密さ。『人の見落としたものを拾っていく』ってわけ。」

その笑顔には、マジックの喜びも達成感もなく、ただ純粋な「遊び」のような無邪気さがあった。

だけど、それが何より恐ろしい。

最後に課長はこう言った。

「これからは気をつけてね。大事なものをなくさないように。君が失敗するたび、僕のネタが増えるんだから。」

その後、課長が去った部屋には、私がずっと探していた家の鍵が机の上に静かに置かれていた。

この怖い話から得た人生の教訓

  • 人を操るもっとも怖い能力は、「無害そうに見える笑顔」の裏側にある
  • 誰が何を知っているか、本当に分からないのが怖いのだ

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