花魁(おいらん)とは、江戸時代の吉原遊郭で最も位が高いとされていた遊女のことをいいます。
美貌・教養を兼ね備えた選ばれし者だけが花魁になれるとされますが、その生活は決して楽ではありません。
遊郭での生活に限界を感じ、足抜けを試みようとする花魁もいたようです。
この記事では、花魁がどのように足抜けをしていたのか、その実態について解説します。
花魁の足抜けとは?成功率はどれくらい?
遊郭における足抜けとは「廓から脱走すること」を指します。
一般的な遊女の年季奉公(契約)の期間は、雇い主の妓楼に利益を出すようになってから10年間です。
見習い時代の禿(かむろ)・新造(しんぞう)などの客を取らない期間はカウントされず、10年以上の期間を吉原遊郭の中だけで過ごすことになります。
そのため、遊女の中には足抜けや駆け落ちを試みるものも少なくありませんでした。
しかし、置屋にとって足抜け・駆け落ちなどの遊女の逃亡は、管理不足が露呈する最大の恥。
足抜けをさせないよう厳重な管理体制が敷かれており、脱走を試みた者に対しての処罰も厳しいものでした。
足抜けの成功率はほんのわずか
年季明け(契約終了)前に足抜けを試みる遊女はたくさん居たものの、成功率はほんのわずか。
加えて、足抜けに失敗すると厳しい罰が待っており、遊女にとって足抜けは「一縷の望みをかけた大勝負」だったのです。
花魁ともなれば、一晩で多額の金を稼ぐ置家の看板娘的存在なので、足抜けを試みたとしても連れ戻されることがほとんどでした。
花魁が足抜けしたいと考えるのは何故?
遊女のトップに君臨する花魁となると、吉原の中で派手な衣装に身を包み闊歩する「花魁道中」を行えるなど、様々な特権が与えられます。
それだけでなく、豪華絢爛な衣装や屋敷を与えられたりする花魁も居たそうです。
しかし、そんな華やかな生活であっても足抜けを試みる花魁は少なくありませんでした。
こちらでは、遊女の憧れである花魁が足抜けをしたいと考える理由について解説します。
間夫との駆け落ち
花魁の足抜けを考えるきっかけとなるのが、間夫(まぶ)の存在。
間夫とは「遊女たちが心から愛する男性」を指します。
男性と一夜を過ごすことが仕事の遊女にとって、本気の恋愛はタブー。
しかし、たくさんの男性と出会う環境の中で、本気で愛する存在と出会うのは自然なことでしょう。
間夫への想いが募り、駆け落ちを試みる遊女も少なくありませんでした。
店の男衆との密通が発覚
遊郭において絶対に禁止とされている行為の一つに「男衆との密通」があります。
男衆とは遊女たちの身の回りの世話をする男性のことをいい、女の世界である遊郭においても重要な存在です。
客である男性と床を共にする遊女の身体は、いわば重要な商売道具の一つ。
男衆との密通は、大切な商売道具に傷をつけられたのと同じで、発覚すると双方に厳しい処罰が待っています。
そのため、店の男衆との密通が発覚すると、花魁たちは処罰から逃れようと足抜けを試みるのです。
花魁が足抜けに失敗したらどうなる?
花魁の足抜けは店の一大事であるため、失敗した場合の厳罰もかなり大きなものとなります。
では、花魁が足抜けに失敗すると、どのような罰が待っているのでしょうか。
こちらでは、足抜けに失敗した花魁に待ち受けている悲惨な末路について解説します。
眠らせない等の仕置き
花魁が足抜けに失敗して店に戻されると、厳しい折檻や仕置きが待っています。
仕置きの内容は様々で「眠らせない」「食事を与えない」「丸裸にして木に縛りつけられる」などがあります。
さらに、捜索に掛かった費用が年季(契約期間)に追加されてしまいます。
厳しい内容だと感じますが、花魁の足抜けに対する処罰として、これらは軽い方だといわれています。
つりつり
足抜けに失敗し、非常に厳しい折檻を命じられた花魁も居ます。
通称「つりつり」と呼ばれるもので、両手足を縄で縛り天井に吊るして拷問するというもの。
殴られるだけでなく竹の棒で叩かれるなど、気絶するまで地獄の時間を過ごすことになります。
最悪の場合には、命を落としてしまう花魁も居たそうです。
つりつりは店主である楼主が自ら行う拷問で、物置などの拷問部屋で行われました。