不気味だけどどこか切なく、そして心に深く残る。
『世にも奇妙な物語』は、数あるオムニバスドラマの中でも群を抜いて“名作”と呼ばれるエピソードが多い傑作シリーズです。
今回はその中でも「トラウマ必至」「感動」と話題になった“神回”を厳選してご紹介します。
この記事では物語のネタバレがありますので、ご了承ください。
世にも奇妙な物語の名作・神回5選|トラウマ回
『世にも奇妙な物語』には、視聴者の心に深く刻まれるトラウマ級のエピソードが数多く存在いたします。
こちらでは、その中でも特に印象的で「神回」と評される名作を厳選してご紹介いたします。
懲役30日
「日本に死刑制度がなかったら?」という、ありそうでなかった設定が視聴者に強烈なインパクトを与える名作。
無差別殺人を犯した男が受けた判決は終身刑と思われましたが、なんとたったの「懲役30日」でした。
軽すぎる刑罰を聞いた男は余裕の表情を浮かべますが、実際にはその内容がまさに“神回”級の衝撃なのです。
男は収監されたその日の朝8時に注射を投与され、その後30日間にわたって看守長から拷問を受け続けます。
30日間を耐え抜きましたが、死刑制度がないはずにもかかわらず、彼は電気椅子にかけられます。
怒りと絶望に吞まれながら絶命したはずですが、男がベッドで目覚めます。
そこで、今までの拷問・死刑はすべて仮想現実による処罰だったとしり、実はまだ「5分」しか経っていないことが判明。
その後装置によって“720年分”もの苦痛を味わった彼は、釈放されたものの、もはや以前の彼ではなくなっていたのです……。
雪山
サバイバルホラーとサイコサスペンスを融合させたような傑作回。
飛行機事故の生存者たちが雪山を彷徨う中、次第に深まっていく謎と狂気が視聴者の脳裏に深く焼き付く作品です。
物語の始まりはシンプル、飛行機墜落事故で生き延びた美佐、麻里、結城、真辺、山内の5人が助けを求めて雪山を歩き続けます。
しかし、麻里が足を負傷して亡くなり、彼女を埋葬したあとも、一行は山小屋を探して、ようやく見つけた山小屋で救助隊を待つのですが、今までの疲労から眠気が全員を襲います。
全員で一斉に寝ると全滅してしまうので、交代で1人が皆の様子を確認し、残り3人は寝ることで安全に寒さを凌ごうとしました。
ところが、誰かに起こされたから交代するはずなのに、全員が眠っているため誰が起こされたのかわからないという不可解な状況が何度も発生するのです。
やがて、死んだはずの麻里が再び現れ、仲間たちを次々に襲撃します。
その様子を生き残りの美佐と結城が映像に残したところで、2人は寝てしまうのです。
美佐が目を覚ますと隣で結城が死んでおり、ビデオを確認すると美佐が全ての惨劇を自ら引き起こしていたと判明する展開は、まさに“トラウマ”級の衝撃。
『世にも奇妙な物語の神回』として必見の一本です。
走る取的
この回は、背筋が凍るような恐怖に変わる“ザ・奇妙”な物語。
気づけば息が詰まるようなスリルに包まれている名作です。
主人公の信田と後輩の亀井は、酒の席で「デブは嫌い」などと軽口を叩いたことをきっかけに、謎の“取的(力士)”に執拗につけ回される羽目に。
最初は偶然かと思いきや、どこまでも追いかけてくるその姿に2人は次第に恐怖を募らせます。
「謝れば済むかも」と信田が試みるも、取的は容赦なく追ってくるので2人はついに反撃を決意しますが、亀井は張り手一発で首をへし折られ死亡。
信田も最後は神社に逃げ込むも、背後から取的に締め上げられて命を落とす。
追いかけられる恐怖と死の恐怖が交差するこのエピソードは、視聴後も不気味さが残る傑作です。
世にも奇妙な物語らしい“神回”の代表格です。
ロッカー
密室劇の極致ともいえる、短時間で畳みかける恐怖と絶望が特徴的な回。
「バレるよりも恐ろしい」結末が待つ、息を呑むトラウマ回として今なお高く評価される作品です。
産業スパイである悟は、研究所の機密書類をコピー中に研究員・佐口と鉢合わせてしまい、咄嗟に殺害します。
とっさに開いた「佐口」と書かれたロッカーに身を隠しますが、運命はさらに残酷でした。
ロッカーの扉は内側から開かず、そのまま誰にも気づかれぬまま作業員によって処理場へと運ばれていくのです。
中から叫び声を上げ続ける悟の声は届かず、静かに処理ラインへ……。
ロッカーとともに運命を共にして、物語は幕を閉じます。
最後まで誰にも気づかれないという“絶望の演出”は、まさに“傑作”と呼ぶにふさわしい完成度でしょう。
密閉空間の恐怖に“閉所恐怖症”の人は特に要注意です。
イマキヨさん
この物語は視聴者の記憶に深く残る神回でしょう。
幸運をもたらすとされる謎の存在「イマキヨさん」の、あまりにも奇妙で不気味なルールと結末が話題となった一作です。
失恋で落ち込んでいた和夫の部屋に突如現れたのは、頭巾をかぶった謎の存在「イマキヨさん」。
彼は何もしないが、常に部屋の隅に佇んでいて、一定のルールを守ることで幸せが訪れるというのです。
そのルールとは「追い出さない」「傷つけない」「引っ越しの話をしない」「謝らない」の4つ。
しかし、和夫はこのルールを次々と破ってしまい、最後にはイマキヨさんに“吸い込まれる”ようにして姿を消します。
ラストでは、彼自身が新たなイマキヨさんと化すという、ゾッとするようなオチが待っています。
「ネタバレ厳禁」の一言に尽きる、シュールで不穏な空気が絶妙なこのエピソードは、“世にも奇妙な物語の名作”として語り継がれる一篇です。
世にも奇妙な物語の名作・神回3選|感動回
『世にも奇妙な物語』と聞くと、“怖い”“トラウマ”といったイメージを抱きがちですが、実は“感動”の名作も数多く存在します。
不思議な世界観の中で、人と人との絆や、喪失と再生が描かれるこれらの神回は、多くの視聴者に涙と余韻を与えてきました。
今回は“感動回”に絞って厳選した3作品をご紹介します。
思い出を売る男
“記憶は財産”という言葉を、ここまで切なく描いた作品があったでしょうか。
家族への愛をテーマにしたこの回は、世にも奇妙な物語の中でも特に“泣ける傑作”として知られています。
借金に追われながらも懸命に生きる古川は、思い出を売買できる不思議な店に辿り着きます。
初恋、夫婦喧嘩、かけがえのない日々の記憶を一つずつ売ることで現金を得る彼ですが、唯一「妻と息子のダイキの思い出」だけは守ろうとしました。
しかし息子の重病を患い、高額な手術費が必要になった古川は、ついにその最後の記憶まで売り払います。
すべてを失い廃人同然になった彼のもとに現れたのは、記憶から消えたはずの妻と息子でした。
妻から告げられた言葉は「あなたは覚えていないかもしれないけど、また一緒に思い出を作ろう」。
この言葉と共に物語は静かに幕を閉じ、涙なしでは見られない感動を届けてくれる、真の“神回”です。
過去からの日記
“想い”は時空を越える。そんなファンタジックで心温まるテーマを丁寧に描いたこの回は、多くの視聴者に“希望”と“涙”を与えた名作です。
小説家としてデビューするも、まったく売れず生活に苦しむ主人公。
ある日、古本屋で自分の作品が束になって安売りされているのを見つけ、つい購入した中に、一冊の「日記帳」が紛れていました。
それは3年の時差で繋がる、病弱な少女との日記だった。
交流を重ねるうちに少女が残り1年の命であることを知った主人公は、彼女の「小説家を諦めないでほしい」という願いに応えて執筆を続け、ついに「過去からの日記」という作品を完成させます。
出版された小説は大ヒットし、ついにはサイン会が開かれるのですが、そこで現れたのは、奇跡的に病を克服した少女でした。
過去と現在を繋ぐ言葉の力が、静かに心を震わせる“感動の神回”です。
時の女神
人の記憶に宿る“時間”と“愛”を美しく切なく描いた幻想的なエピソードで、『世にも奇妙な物語』の中でも特に“優しい奇跡”が感じられる感動作です。
花屋でガーベラの花を見た沢田修平は、亡き妻との日々を思い出すところから始まります。
彼女は生前、時折ガーベラの花と共にふと姿を消すことがあり、その理由を病気で倒れるまで語りませんでした。
しかし、晩年になると生涯をともにした夫に向けて妻は真実を明かします。
「私は時を越えることができるの。あなたがまだ子どもの頃から、ずっと見ていたのよ」。
その言葉が意味するのは、運命さえも超越した愛でした。
妻の死後、悲しみに暮れながらも修平は娘を立派に育て上げます。
そしてある日、回想を終えた彼の背後に、再びガーベラを手にした妻が現れたのを見た修平は涙を浮かべます。
“奇妙”の中に“静かな感動”が息づく、まさに“世にも奇妙な物語の名作”と呼ぶにふさわしい神回です。
世にも奇妙な物語の名作・神回3選|面白い回
『世にも奇妙な物語』には、恐怖や感動だけでなく、思わずクスッと笑ってしまう“面白い”回も存在します。
不条理でシュール、けれどどこか共感できてしまう世界観が魅力の“笑える神回”は、見る人にとって忘れられない印象を残すものばかり。
今回はその中から、特に人気の高い名作を3本厳選してご紹介します。
ズンドコベロンチョ
「“知らないふり”がここまで面白いなんて!」。
社会人なら誰もが共感せざるを得ない、“知らないことを恥と思う”プライドを皮肉たっぷりに描いた、世にも奇妙な物語屈指の傑作です。
大手広告代理店のエリート・三上は、ある日突然、周囲の人々が「ズンドコベロンチョ」という謎の言葉を使っていることに気づきます。
流行語や新語には精通しているという自負がある三上は、知っているふりをしながらも内心は焦燥の連続。
正体を探るも、プライドが邪魔して誰にも聞けず、混乱が深まるばかりです。
やがて会社でも「ズンドコベロンチョ・プロジェクト」が立ち上がり、なぜか三上が責任者になってしまいます。
追い詰められた彼は、ついに会議の場で「ズンドコベロンチョって何ですか!」と絶叫します。
この“謎が解明されない面白さ”と、“正体不明のワード”が社会現象になったこの作品は、まさに“世にも奇妙な物語の神回”です。
夜汽車の男
世にも奇妙な物語の中でも、異彩を放つ“無駄にドラマチックな日常”を描いた、知る人ぞ知る名作です。
深夜、夜行列車に乗り込んだ主人公の男。
彼はトレンチコートを身にまとい、何か重大な使命でも抱えているかのような雰囲気で、静かに座席を探し続けます。
そしてついに、落ち着ける場所を見つけた彼は、ビニール袋から駅弁を取り出し、一口ごとに具材を分析しながらじっくりと味わうのです。
その様子は異様に真剣ですが、内容は“ただ駅弁を食べるだけ”。
シュールで淡々と進む中にも、どこか癖になるリズムと演出が光る作品です。
奇妙さよりも笑いを求める方には、まさに“神回”としておすすめの一本です。
来世不動産
死後の世界をユーモアと切なさで彩った異色の名作で、脚本にはバカリズムさんが携わっています。
物語は、男が病床で意識を失う場面から始まります。
窓の外で鳴くセミの声に苛立つ妻が窓を閉めると、男はふと草原で目を覚ますのです。
目の前には「来世不動産」と書かれたレトロな建物があり、そこで彼は自分の死を知らされると同時に、“来世”を選ぶ場であることを教えられました。
人間として生まれ変わるには前世で徳を積むことでもらえる“ポイント”が必要ですが、男にはそれが足りませんでした。
やむなく彼は「セミ」として来世を選び、この世に戻ることを決意します。
空を飛び、かつての病院へとたどり着くと、そこには死の間際にある入院患者と、その妻の姿が。
彼が「セミ」として飛び回る中、病室の妻が一言「セミがうるさい」と言って、再び窓を閉めるのです。
生まれ変わりをユニークに描いた、笑えて泣ける“世にも奇妙な物語の傑作”です。
世にも奇妙な物語の名作・神回を振り返ってみよう
『世にも奇妙な物語』には、ただ怖いだけではない、“心に残る名作”や“神回”が数多く存在します。
ゾッとするようなトラウマ回から、静かに涙を誘う感動回、そしてクスッと笑える面白い回まで、その幅広い魅力がこのシリーズを“傑作”たらしめているのです。
ご紹介した中には、「ネタバレ厳禁!」とまで言われるほどの強烈な結末を持つエピソードや、放送から何年経っても語り継がれる回も多く含まれています。
まさに、“世にも奇妙な物語の名作”と呼ぶにふさわしい作品ばかり。
もしまだ視聴したことがない作品があれば、ぜひチェックしてみてください。
何気ない日常にひそむ“奇妙”が、あなたの心に深く刻まれるはずです。