お経みたいなメロディーやリズムの曲、呪文のような不思議なフレーズが入った歌を聞くと、異次元の世界に誘われるような気分になりませんか?
お経の雰囲気だけでなく読経の声を取り入れた曲や、お経を歌詞に取り入れた歌、宗教的なメッセージ性を持つ歌もあります。
この記事では、お経みたいな曲とボカロ、洋楽を紹介していきます。
お経みたいな曲
お経のような曲には、宗教的なムードの曲や、意味不明の呪文のようなフレーズがある曲など、いろいろなタイプの楽曲があります。
意図的にお経の世界観を強調している歌もあれば、曲のテーマからお経っぽく聞こえるものもあるでしょう。
はじめに、お経みたいな日本の歌を紹介します。
椎名林檎 / 鶏と蛇と豚
般若心経から始まる椎名林檎の「鶏と蛇と豚」は、アルバム「三毒史」のオープニングトラックです。
三毒とは、仏教において克服すべき3つの煩悩、“むさぼり”、“いかり”、“おろかさ”のこと。
アルバムタイトル、三毒をイメージした「鶏と蛇と豚」は、お経みたいな曲と言うより、音楽でお経を体感する、あたらしいお経と言えるかもしれません。
ダンサーAYA SATOが三毒を表現したMVを見ると、自分や周りの人が持つ煩悩について考えてみたくなるでしょう。
パレード / 平沢進
平沢進の「パレード」は、曲の冒頭から呪文のように聞こえる声が響き、晴れやかな現実世界と相反する、不穏な別世界を感じさせる曲。
お経のような音声は、自身の曲「nurse cafe」の歌を逆再生したものだとか。
筒井康隆の小説を原作としたアニメ映画「パプリカ」に起用された曲で、夢と現実が混迷するという作品のテーマに似合う曲です。
他人に悪夢を見せる事件を描く映画「パプリカ」のように、「パレード」を聞くと悪夢を見ているような気分になるでしょう。
GASSHOW / illion
RADWIMPSのボーカル、野田洋次郎のソロプロジェクト、illionの「GASSHOW」は「合掌」を連想させるタイトルで、祈りの言葉のような雰囲気を持つ曲です。
古文的な歌詞と、お経のような単調なリズムが耳に残る曲ですが、この曲が作られたきっかけは東日本大震災でした。
「GASSHOW」は、震災や津波で感じた不安や悲しみ、勇気や希望などの感情を、忘れないようにと作られました。
震災にまつわる人々のいろいろな思いが、胸に刺さります。
おしゃかしゃま / RADWIMPS
カラオケ会社の「難しすぎて歌えない歌」ランキングでTOP2を記録したRADWIMPSの「おしゃかしゃま」は、早口言葉のような歌詞がお経みたいな曲です。
呪文のようにも聞こえ、一度聞いただけでは意味を理解するのが難しい歌詞は「神様」「来世」など、仏教やキリスト教の言葉が使われた、シニカルな内容になっています。
音楽にハマる人、歌詞にハマる人と、人によって好みが分かれる曲ですが、中毒性があり頭から離れなくなる曲です。
Edge / Perfume
人気テクノポップユニットPerfumeの「Edge」は、シングル曲「love the world」のカップリング曲で、いろいろなバージョンがある人気ナンバー。
無機質なテイストの歌い方とテクノなリズム、同じフレーズを何度も繰り返しながら展開していく歌は、お経のようにも聞こえるでしょう。
かわいらしいボーカルで「誰だっていつか死んでしまう」などと、ドキッとさせる内容を歌っていて、ドライな曲の世界観に引き込まれます。
あの子のジンタ / チャラン・ポ・ランタン
チャラン・ポ・ランタンの「あの子のジンタ」は、ダークな世界観で人気の高いガロ系漫画「少女椿」を、同タイトルで実写映画化した作品の主題歌となった曲です。
大道芸やサーカスの音楽性を持つチャラン・ポ・ランタンのパフォーマンスは、見世物小屋を舞台にした怪しいムードの作品「少女椿」の世界そのもの。
可憐なのに残酷で恐ろしい雰囲気のある歌詞と、レトロで物悲しいメロディーから独特な無常観が漂い、お経みたいな曲です。
輪廻転生 / ぼくのりりっくのぼうよみ
「ぼくりり」こと、ぼくのりりっくのぼうよみの「輪廻転生」は、人は死んだ後に生まれ変わることを意味する仏教用語「輪廻転生」をタイトルとした、お経みたいな曲。
罪や死などをテーマとした曲で、MVは「輪廻転生」と「執行猶予」「囚人番号」「死刑執行」の四部作で構成されています。
「ぼくりり」は2019年にこの曲を発表後、ラストライブ「葬式」を最後に活動を停止しましたが、その後は曲名のように別名「たなか」として活動を続けています。
お経みたいなボカロ曲
ボカロで人気のジャンルには、和のテイストがおしゃれな和風ボカロ、人間では歌えないような超高速の早口ボカロなどがあります。
どちらも独特な世界観が魅力的な歌詞、フレーズがあり、お経みたいな曲も珍しくありません。
続いては、お経っぽいボカロ曲を紹介します。
般若心経ポップ
天台宗・真言宗など多くの仏教で読まれる「般若心経」に、ポップなメロディーを載せて爆発的にヒットしたボカロです。
お経みたいなボカロというより、歌詞は般若心経そのままなので、お経の新しいスタイルと言えるかもしれません。
実際に僧侶がお経を上げる際にも、歌うように高低をつけたり音を伸ばしたりするので、この「般若心経ポップ」も若い人から自然に受け入れられました。
この曲で般若心経を覚える人が増え、お経に興味を持つ人が増えたと言われています。
嬢王
音楽ゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」の3周年記念に書き下ろされた、八王子Pの高難易度書き下ろしボカロです。
q*Leftによる歌詞は強気な嬢王ムードですが、超高速の部分の歌詞は呪文のようにも聞こえて、お経っぽい印象もあります。
音楽ゲーム特有の高速でインパクトのあるドラムに、和楽器のサウンドの効かせ方がクールで、音楽ゲームファン以外の人にも人気の、かっこいいボカロです。
傀儡阿修羅
作詞作曲柊マグネタイトで、初の星介が歌う作品となった和風ボカロです。
タイトルの傀儡阿修羅(くぐつあしゅら)さえ、意味が分かりにくいのですが、歌詞もお経のような難しい単語が延々と続く、マニアックな曲。
映像で字幕を見ても、意味不明で日本語なのか呪文なのか分からなくなってきます。
「歌詞の意味は分からなくても、かっこいい」「響きが好きで楽しい」という人が多く、Youtubeでミリオン・殿堂入りを達成しました。
孤独の宗教
不幸には中毒性があることをテーマにした「孤独の宗教」は、syudou作詞作曲で歌手のゆきむら。に書き下ろされた曲を、ボカロにした作品です。
「アタシは不幸じゃない」というフレーズが繰り返され、機械的な初音ミクの歌唱だからこそ、孤独や冷え切った気持ちが強く伝わってきます。
同じ言葉を何度も繰り返すことで、聞いた人の頭に歌詞のイメージがより深く刻み込まれる歌で、お経っぽいパワーを持つ歌と言えるでしょう。
お経みたいな洋楽
洋楽にも、お経みたいな曲があります。
単調なリズムや繰り返されるワードが、お経のように聞こえる場合もありますし、曲のアクセントにお経のようなサウンドを使っている曲もあるでしょう。
最後は、お経みたいな洋楽を紹介します。
Tin King / Ultraísta
アーティスティックで実験的な音楽ジャンル、エクスペリメンタル・ロックのバンドUltraístaは、イギリス系アメリカ人の音楽グループ。
ブリキの王を意味する「Tin King」はデジタルなサウンドに女性ボーカルと、お経的な要素は全くないはずなのですが、なぜかお経っぽく聞こえます。
歌詞は意味のない単語が連なる詩のような内容で、最後まで同じトーンが続いていく歌ですが、日本人には英語圏の方がお経を唱えているように聞こえるでしょう。
Rosenrot / Rammstein
ドイツのバンドRammsteinは、重厚感のあるボーカルと過激なパフォーマンスで、ドイツハードロックの先駆者となったバンドです。
「Rosenrot」は罪やタブーをテーマにしたダークな雰囲気の曲で、ドイツ語の歌詞と低音が響くフレーズが、密教系のお経っぽく聞こえる骨太のロックです。
MVには自らの肉体を傷つけて修行する僧侶のシーンがあり、全体的に宗教的な雰囲気があるのも、お経みたいに聞こえる理由の1つなのかもしれません。
Crushed / Parkway Drive
オーストラリアのメタルコアバンドParkway Driveの「Crushed」は、”我々は神の拳で押しつぶされた”と、不条理な人生への怒りを爆発させる曲。
MVの冒頭には、金色に輝くスキンヘッドの僧侶のような男性が、ゲームをしている映像が挿入され、お経のような声が聞こえます。
我々の人生は、神様にとってゲームの1つと言うテーマの演出として、お経のようなサウンドがサンプリングされている、ユニークなメタルです。
Xzibit / Concentrate
ラッパーXzibitの「Concentrate」は、曲のフックにお経のナンミョーホレンゲキョ(南妙法蓮華経)が使われている、アジアンテイストなラップです。
MVには僧侶風の老人や、日本を意識したと思われる武術シーン、和太鼓などが登場し、「集中すること」を推奨する曲になっています。
海外アーティストにも仏教徒は珍しくなく、ソウル歌手のティナ・ターナーのように、日頃から南妙法蓮華経を唱える人もいるようです。