怪談vol.4:赤いお守り

怪談4

この話が噓か真か…。どう思うかはあなた次第です…。

伊藤涼が小学校6年生だった頃、彼には鈴木哲也という親友がいて、「てっつん」と呼んでいた。

二人は毎日のように遊び、学校が終わると一緒に公園に行ったり、ゲームをしたりしていた

鈴木とは何でも話せる、

かけがえのない友達だった。

ある日、放課後に二人はよくあるように、将来の話をしていた

「中学校に上がったら、きっと楽しいだろうな」と涼が言うと、鈴木は少し遠くを見つめながら言った。

うん、でもさ、俺、関東に引っ越すんだ。

涼はその言葉に耳を疑った。

「え?引っ越すの?」

鈴木は頷いた。

「うん、父さんの仕事の都合で。だからもう、あんまり会えなくなるかも…」

その瞬間、涼の胸に激しいショックが走った。

鈴木とは毎日一緒にいたのに、急に会えなくなるなんて

涼はその感情にどう対処すべきか分からず、言葉が出なかった。

「は…?」涼はただそう言って、顔を背けた。

鈴木は少し寂しそうに笑った。

「でも、別れじゃないからさ。絶対にまた会えるよ!」

しかし涼は何も答えられなかった。

その場で頭がいっぱいになり、思わず「そんなことどうでもいいんだよ!早く勝手に行っちまえよ!」と悪態をついて、そのまま鈴木から逃げるようにどこかへ走り去ってしまった

その後、涼は鈴木と一切話さず、日々が過ぎていった。

心の中で後悔の気持ちが積もっていったが、どうしても鈴木に顔を合わせることができなかった

そして、鈴木が引っ越しする前日、夜、インターホンが鳴った。

涼は驚いて玄関を開けると、そこには鈴木が立っていた

鈴木は一瞬、少し照れたように笑った。

涼、やっと顔を見てくれたな…

涼は言葉が出なかったが、鈴木君は続けた。

「俺、明日引っ越すんだ。でも、今までありがとうな。ちゃんと、最後に言いたかったんだ。」

その言葉に涼は涙をこらえきれなかった。

二人はお互いにしばらく黙って立っていたが、鈴木はポケットから赤い小さなお守りを取り出し、涼に渡した。

「これ、俺が作ったんだ。友情の証に。大事にしてな。」

涼はそのお守りを受け取った。

鈴木の手作りで、赤い糸が編み込まれている

鈴木らしい、素朴で温かいプレゼントだった。

その日、鈴木は帰り道で事故に遭い、命を落とした。

鈴木が自動車にはねられたのは、お守りを渡したその日だった

涼はその知らせを聞いて、あまりのショックに何も言葉が出なかった。

鈴木の葬儀に参列し、ただ涙を流しながらその死を受け入れた。

あの時の謝りきれなかった思い、鈴木からの友情を心から感謝し、そして別れを告げた。

それから月日が流れ、涼は社会人となり、日々忙しく働いていた。

ある日の夜、残業で深夜になり、帰宅途中の街中を歩いていた

疲れもあり、頭がぼんやりとする中、ふと顔に何かが当たった

涼は驚き、後ずさりしてその物が地面に落ちるのを見た。

暗がりの中で、それは何か赤いものだった。

涼はそを拾うと、目の前で何かが走り抜けた

驚く間もなく、スピードを出した車がすぐ目の前を通り過ぎた。

もし後ずさりしていなかったら、確実にその車にはねられていた

涼は恐る恐る、手にした物を見た。

それは、あの日鈴木君からもらった赤いお守りだった。

驚きと共に、涼は目を見開いた。「どうして…?」涼は心の中でその問いを繰り返した。

鈴木からもらったはずのお守りは、実家に置いてあったはずだ

あのことがあってからは、ほとんどそのことを考えていなかった。

しかし、今目の前にそれがある。

さらに奇妙なことに、それが自分を守るように、命を救ったような気がした

涼は手にしたお守りをしばらく見つめながら、心の中で鈴木君に語りかけた。

ありがとう…てっつん…

涼は静かにお守りを胸に押し当てた。

死してなお、鈴木は涼の親友であり、守ってくれたのだ。

涼はその後、無事に家に帰ることができた。

あの赤いお守りは今もなお、涼の手のひらで大切に握られている

鈴木君との友情の証として、そして彼の思いが、死を越えて今も続いている証として。

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