この話が噓か真か…。どう思うかはあなた次第です…。
伊藤涼が小学校6年生だった頃、彼には鈴木哲也という親友がいて、「てっつん」と呼んでいた。
二人は毎日のように遊び、学校が終わると一緒に公園に行ったり、ゲームをしたりしていた。
鈴木とは何でも話せる、
かけがえのない友達だった。
ある日、放課後に二人はよくあるように、将来の話をしていた。
「中学校に上がったら、きっと楽しいだろうな」と涼が言うと、鈴木は少し遠くを見つめながら言った。
「うん、でもさ、俺、関東に引っ越すんだ。」
涼はその言葉に耳を疑った。
「え?引っ越すの?」
鈴木は頷いた。
「うん、父さんの仕事の都合で。だからもう、あんまり会えなくなるかも…」
その瞬間、涼の胸に激しいショックが走った。
鈴木とは毎日一緒にいたのに、急に会えなくなるなんて。
涼はその感情にどう対処すべきか分からず、言葉が出なかった。
「は…?」涼はただそう言って、顔を背けた。
鈴木は少し寂しそうに笑った。
「でも、別れじゃないからさ。絶対にまた会えるよ!」
しかし涼は何も答えられなかった。
その場で頭がいっぱいになり、思わず「そんなことどうでもいいんだよ!早く勝手に行っちまえよ!」と悪態をついて、そのまま鈴木から逃げるようにどこかへ走り去ってしまった。
その後、涼は鈴木と一切話さず、日々が過ぎていった。
心の中で後悔の気持ちが積もっていったが、どうしても鈴木に顔を合わせることができなかった。
そして、鈴木が引っ越しする前日、夜、インターホンが鳴った。
涼は驚いて玄関を開けると、そこには鈴木が立っていた。
鈴木は一瞬、少し照れたように笑った。
「涼、やっと顔を見てくれたな…」
涼は言葉が出なかったが、鈴木君は続けた。
「俺、明日引っ越すんだ。でも、今までありがとうな。ちゃんと、最後に言いたかったんだ。」
その言葉に涼は涙をこらえきれなかった。
二人はお互いにしばらく黙って立っていたが、鈴木はポケットから赤い小さなお守りを取り出し、涼に渡した。
「これ、俺が作ったんだ。友情の証に。大事にしてな。」
涼はそのお守りを受け取った。
鈴木の手作りで、赤い糸が編み込まれている。
鈴木らしい、素朴で温かいプレゼントだった。
その日、鈴木は帰り道で事故に遭い、命を落とした。
鈴木が自動車にはねられたのは、お守りを渡したその日だった。
涼はその知らせを聞いて、あまりのショックに何も言葉が出なかった。
鈴木の葬儀に参列し、ただ涙を流しながらその死を受け入れた。
あの時の謝りきれなかった思い、鈴木からの友情を心から感謝し、そして別れを告げた。
それから月日が流れ、涼は社会人となり、日々忙しく働いていた。
ある日の夜、残業で深夜になり、帰宅途中の街中を歩いていた。
疲れもあり、頭がぼんやりとする中、ふと顔に何かが当たった。
涼は驚き、後ずさりしてその物が地面に落ちるのを見た。
暗がりの中で、それは何か赤いものだった。
涼はそれを拾うと、目の前で何かが走り抜けた。
驚く間もなく、スピードを出した車がすぐ目の前を通り過ぎた。
もし後ずさりしていなかったら、確実にその車にはねられていた。
涼は恐る恐る、手にした物を見た。
それは、あの日鈴木君からもらった赤いお守りだった。
驚きと共に、涼は目を見開いた。「どうして…?」涼は心の中でその問いを繰り返した。
鈴木からもらったはずのお守りは、実家に置いてあったはずだ。
あのことがあってからは、ほとんどそのことを考えていなかった。
しかし、今目の前にそれがある。
さらに奇妙なことに、それが自分を守るように、命を救ったような気がした。
涼は手にしたお守りをしばらく見つめながら、心の中で鈴木君に語りかけた。
「ありがとう…てっつん…」
涼は静かにお守りを胸に押し当てた。
死してなお、鈴木は涼の親友であり、守ってくれたのだ。
涼はその後、無事に家に帰ることができた。
あの赤いお守りは今もなお、涼の手のひらで大切に握られている。
鈴木君との友情の証として、そして彼の思いが、死を越えて今も続いている証として。

